Fall In Love With You

いけしゃあしゃあで暮らしたい

1031 靴下が嫌いな人を愛してる話

 

 

「会いたいなぁ」スマートフォンに向かって言ったところであなたに会えるわけじゃない。いつも疎かにしながらも未だにあなたを超える人なんて現れないし、あなたはそれを当たり前として何の感情も抱かず「そうですね」と肯定するだろう。そんな時に、耳に入った、一報、それは、あなたが約3分間だけ現れるという文字だった。
「3分間だけ、ねぇ」久しぶりに会えるかもしれないのに時間はわずか3分。それも、わたしはあなたを見ることしかできない。ただ見るだけ。あなたはわたしを見向きもしない。話すことも触れることも、できるわけじゃない。とどめに第三者の影なんて、気が狂いそう。
「会いに来てくれないんですか?」よく言う。「会わないとは言ってないでしょ」って言う声が尻すぼみになる。今すぐ会いたいって、何百回何千回思ったことか。「私達の、思い出の場所じゃないですか」思い出だなんて言わないでよ。

わたしを一人置いてったくせに

「それを言われてはどうすることもできません」あなたを困らせたいわけじゃないのに、うっすい眉毛がハの字に傾く。相変わらず真っ黒で光を灯さない目が、わたしはずっとずっと好きだ。不健康そうに見えて健康そのもののような身体のしなやかさも、ボサボサの黒髪も、読点を知らないかのような喋り方も、ぜんぶずっと好きだ。
わたしの頭の中じゃなくて、きちんとあなたとして会えるなんて、もう絶対にありえないと思っていたしあんなずるい別れ方しといて、会いたくなんかなかった。悔しい一番好きだ死ぬほど好きだ、わたしが代わりに死んでしまいたいくらいに好きだ。物語の中の人物だから、死んでしまうことはシナリオだってわかってるけどわたしはあなたが死ななきゃいけない世界は嫌だなと思う。あなたがずっと活躍する世界が、いやあなたがただ甘いものを食べながら生きてる世界がいい。死んでしまって何年経ったか数えるのも嫌だけれど、わたしはずっと、やっぱりずっとあなたが好きだ。

思い出の場所ー劇場に足を運ぶ勇気と時間がない。
苺のショートケーキの美味しいお店を探そうと思っていたのに、スマートフォンの画面は近くの劇場の上映時間を表示している。


お誕生日、おめでとう。何年経っても、あなたがいくつになっても、わたしがいくつになっても、唯一絶対1番でい続ける最愛のあなたへ。すきで、だいすきで、あいしています。
勇気が出たら、時間を作ります。今日はケーキを買うので許してください。